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【対談:ドイツで働く 第3回 】日独クロスボーダー人材の必須スキルとキャリアの可能性

日独産業協会 DJW X JAC Recruitment

「ドイツで働く」をテーマに、ジェイ エイ シー リクルートメント ドイツのシニアコンサルタント鈴木が、ゲストと対談いたします。  

第3回は、30年以上の歴史を持ち、国境を越えて活動を展開する最大規模の日独ビジネスプラットフォーム、日独産業協会(DJW)で日本人会員のサポートを担当しているアーント沙羅さんをお招きしました。

日本からドイツ、またはドイツから日本へ、国をまたぐキャリア・プランを描く皆さんのお悩みとはどんなものでしょう?

  • どうやって仕事を探せばいい?

  • 求人情報はどこにある?

  • インターンはできる?

  • 語学力はどのくらい必要なの?

情報も人脈も経験も、国内での就職に比べて圧倒的に少ない中、手探り状態で海外での就職活動をしている人もいらっしゃるかもしれません。

そんな挑戦者に寄り添い、日独のビジネスネットワークの人と情報の橋渡しをするアーントさん、そして就職・転職のサポートする鈴木、現場の声を知る二人の対談。話題はクロスボーダー人材の必須スキルやキャリアの可能性にまで広がりました。
 


鈴木:「ドイツで働く」をテーマにした対談企画の第3回目は、アーントさんにお越しいただきました。 
 

アーントさん:よろしくお願いします。ちょうど、「日本語でドイツ就職に関する情報や経験談を発信しているHR系の会社があったらいいな」と思って探していたところ、御社のこれまでの対談記事に出会いました。すごくいい企画だね、って私たちもオフィスで話していて、こちらからお声がけさせていただこうと思っていた矢先のことでした。
 

鈴木:ありがとうございます。ぴったりのタイミングでしたね!

DJW(日独産業協会)のウェブサイトでは、新たに「キャリア・マッピング」というコンテンツをリリースされたんですよね。今回、アーントさんとは日独間のキャリアについてお話しができればと思っています。

 

アーントさん:はい。キャリア・マッピングの中にも「DJWキャリア・トーク」という項目がありまして、そこでは今後、日独でキャリアを積んだ皆さんの経験をご紹介していきたいと思っています。

 

鈴木:拝見しました。YouTubeで公開されていますよね!!

 

アーントさん:そうなんです。これからどんどんインタビュー記事や動画を増やしていく予定です。

 

― 日本やドイツでの就職を目指す人のための情報の入り口「キャリア・マッピング」

 

鈴木:まずは、キャリア・マッピングというプロジェクトの立ち上げの経緯から教えてください。

 

アーントさん:DJWではここ数年「インフォメーションマッピング」というプロジェクトを進めてきました。その中の一つがキャリア・マッピングです。

「キャリア・サービス」というスクワッドの発起人クリストファー・ヘッカーさんのアイデアで、日本やドイツでの就職や仕事についての情報、記事をまとめて見られるプラットフォームを作ることを目的として、プロジェクト「キャリア・マッピング」が立ち上がりました。

DJWの「スクワッド」というのは、会員様が中心となって運営されている分科会の一つで、短期のプロジェクトを力強く進めるグループのことです。

私たちが積極的に何かサービスを提供するというだけではなく、会員様同士のネットワークの中から「こういうサービスがあったらいんじゃないか」というアイデアをたくさんいただけるのがDJWの良さです。
 

鈴木:すごく活発な会ですよね。
 

アーントさん:はい。ますます理想的な形で、協会の活動が活発化していることを感じます。

 

鈴木:会員の方の中には、日本とドイツのバックグラウンドを持っていて、それを生かしてお仕事をされている方もいらっしゃると思います。日独間の就職について、具体的にはどんな事例がありますか?

 

アーントさん:印象的なキャリアを積まれている方がたくさんいらっしゃいます。

当協会は企業会員様だけでなく個人会員様も多く、学生のうちから登録される方もいるんです。その方が企業会員様のところに就職していたり、当協会でインターンをした後に日本で活躍の場を広げている方もいらっしゃいます。

また、ドイツで生まれ、日本で学校教育を受けて、その後ドイツの大学に入って、就職は日本の会社にという感じで日独間を行き来している方もいらっしゃいましたし、その逆も然り。デュッセルドルフには特に、ドイツで生まれた日本人でご自身はドイツ語も日本語もバイリンガル、ドイツに住みながら日系企業に勤めているというパターンもありますし、本当に様々なキャリアの可能性がありますね。

 

― 就職するときに必要なスキルは?日本語、ドイツ語……やっぱり英語!

 

鈴木:日本人がドイツで就職したい、またドイツ人が日本で就職したい、と、双方から相談を受けると思いますが、特にどんな質問が多いですか?

 

アーントさん:一番よくあるご相談は、「どういった能力が必要ですか?」というものですね。「どれくらい日本語、またはドイツ語を使いますか?」「日本語能力試験(JLPT)のN1を持ってたら大丈夫ですか?」ということを皆さん気にされています。

当たり前のことではありますが、日本人がドイツで働きたいならドイツ語を、将来的に日本に行きたいと考えるドイツ人は日本語を、皆さん本当に一生懸命に勉強しているんです。

それはもちろん、とても良いことなんですけど、実際に会社に入ってみたら社内や顧客とのコミュニケーションは英語が共通語だったっていう話は多いです。

日本語もドイツ語も、それぞれできるに越したことはないです。それは間違いないのですが、「それプラス、英語をビジネスの現場で使えるレベルで話せる能力があれば勝ちです!」っていうことはお伝えしています。

 

鈴木:英語の重要性は増していますよね。これだけグローバルに物事が進む中で、ドイツ語だけ、日本語だけ、ではやっぱりなかなか済まされません。

 

アーントさん:当協会でも、できるだけ日本人の方がアクセスする情報は日本語で提供して、ドイツ人にはドイツ語で、母国語でアクセスできるように情報共有を進めているんですけど、いざ集まるとなると共通言語は英語になることが多いです。

でも大丈夫です。一緒にプロジェクトや仕事を進めるために、皆さんどうにかしてコミュニケーションを取っていらっしゃいます。日本人もドイツ人も英語に関してはどちらもネイティブスピーカーではないので、「英語が完璧に話せないといけない」「ペラペラじゃないといけない」というわけではないんですよね。

ただ、英語嫌いな人も結構いるので、英語をブラッシュアップする必要性についてはしっかりと話します。

あとは、少なくともMicrosoft Officeを使えるパソコンスキルや経験の面など、言語スキルにプラスして何ができるのかが大切なのかなと、求人広告を見て思います。

 

鈴木:実際に、弊社でお預かりする求人案件についても、その募集の背景によってどれくらいの言語スキルが必要なのかは、やっぱり案件ごとに全然違っています。
 

ドイツにある日系企業で「アドミのポジションを募集します」と言った場合には、独英の翻訳業務や役所とのやりとりが含まれることも多く、さらに日本語で本社とのやり取りもあるというケースであれば、高い日本語の能力とドイツ語・英語が必要だということになります。

一方で、「セールスを募集します」というケースで、主な担当エリアがドイツ以外のヨーロッパ各国の場合、お客様とのコミュニケーションは基本的に英語がメインになります。日本語はできるに越したことはないけど、それは社内コミュニケーションのためだったり、日本文化や企業カルチャーへの理解があれば上手く会社にフィットしてくれそうだなとプラスにはなりますが、英語スキルが重視されます。


但し、言語スキルだけで仕事が見つかるケースは多くなく、そのポジションに見合うスキルや経験を獲得していくことでよりチャンスは広がると思います。
 

アーントさん:そうですね。まずは何をやりたいのか、目指すべき目標を見つけていただくことが大切かもしれませんね。

 

― 情報を制するものは就職を制する!豊富な経験とネットワークでサポート

 

鈴木:弊社の中でも私は、主に在ドイツ日系企業のご採用支援、また、そこで働きたい方々の就職・転職のサポートをしているので、日本人の方を担当させていただくことが多いのですが、日本で留学やインターンをしていて、ドイツ帰国後すぐに働きたい、といったドイツ人の方の就職サポートもあります。

また、ドイツと日本と両方のバックグラウンドを持ったドイツ育ちの方のケースでは、ドイツで職業訓練を終え、その技術を利用して一度は日本で働いてみたいけど、日本での就職活動ってどうしたらいいの?というご相談をいただいたこともありました。
 

新卒一括採用など、ドイツにはない日本独特の就職のスタイルやスケジュールについて、また履歴書の書き方も国によって違うので、その中で、やっぱり情報収集の難しさをひしひしと感じました。

日本にいて日本で就活するなら情報はいっぱいあるのに、日本からドイツのことを知る、ドイツから日本のことを知る、国を超えてクロスさせようとするとこんなにも情報を得ることが難しいのかと。今回のDJWさんのキャリア・マッピングは、ドイツ就職を目指す皆さんにとってとても助けになると思います。

その先の就職や転職活動については、弊社のような人材会社を上手く活用していただければと思いますし、クロスボーダーのキャリア構築をサポートするという立場で、これから一緒にできることがあるといいですよね。

 

アーントさん:はい。そして、まさにそこがキャリア・マッピングを作った目的です。全てのマッピング・プロジェクトについて言えることですが、リリースして終わりではなく、これからどんどん会員様のアイデアを吸収して拡張していきます。

情報にアクセスする難しさをどうにかしたいよねっていうことから始まったスクワッドなので、今やっとスタートしたとも言えます。日独の間で就職、転職したい人のキャリア作りの何らかの情報源になれれば幸いです。

JACさんは、日本からドイツに就職したいという相談を受けることも多いですか?

 

鈴木:そうですね、ドイツで働きたい、というご相談は多いです。今、現実的に欧米での就職チャンスは限られています。そこにあるのはビザの問題ですが、ドイツはまだ就労許可を取得するのが比較的簡単な国なので、そういうことを調べた上で問い合わせいただくことも多いです。

また、今はアジアで働いているけど次のステップとしてヨーロッパを目指したいという方も多いです。

 

アーントさん:なるほど、日本からドイツへの一直線の流れだけじゃないんですね。すでに海外にいて仕事をした経験があるなら、インターナショナルな職場の雰囲気もわかっているし、そういう面では適応しやすいかもしれませんね。

 

鈴木:そうですね。そこは企業の方も見ているポイントのひとつです。海外で一回も生活したことがない方ですと、本当に海外での仕事や生活に適応できるか心配されるという面はあるように思います。留学でもインターンでも、海外の環境に身をおいた経験があると、企業側も「ドイツでも頑張ってくれそう」と評価に繋がることがあります。

 

アーントさん:ドイツでなくても、海外での経験はアピールポイントになるんですね。自分に何ができて、何ができないかを知り、無理をしすぎず、でも挑戦していくことが大事ですね。

 

― DJWは挑戦する人、日独関係でネットワークを広げたい人が集まるプラットフォーム、キャリア・フォーラムなどイベントもお楽しみに!

 

鈴木さん:DJWさんのキャリアに関するサービスは、キャリア・マッピング、そして求人情報の掲載以外には何がありますか?

 

アーントさん:日本とドイツ、双方からサポートできるようにと、2019年からは東京にも駐在事務所を開設しました。そこでは、日本に住んでいらっしゃる会員様をサポートしています。また、昨年はコロナの影響を受けて開催できなかったのですが、大学や会員の皆様と協力してキャリアフォーラムを開催したりもしています。
 

鈴木:私も何年か前に、お邪魔させていただいたことがあります。またできるといいですよね。
 

アーントさん:まさに今、会員様の発案でドイツの大学や日独関連団体と共同でキャリアに関するイベントを計画中です。その他にも協会のネットワークを通していろいろなイベントが予定されていますので、ぜひご参加ください。
 

鈴木:これからも、日本とドイツのキャリアをサポートする活動でコラボしましょう。これからもご提案させていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

 

構成・文:高橋萌 

ドイツを拠点にフリーランスのメディア編集者/ライターとして活動しています。「移住者たちのリアルな声でつくった 海外暮らし最強ナビ【ヨーロッパ編】(辰巳出版)」ではドイツの章を執筆。ドイツ大使館ブログYOUNG GERMANYで「ワークスタイル研究室」を連載。日本とドイツで活躍する皆さんを鋭意取材中です。

 

ゲスト:日独産業協会(DJW)メンバー・リレーション アーント 沙羅さん

2020年7月よりDJWの一員となり、日本とドイツの会員のサポート、インフォメーションマッピングなどのプロジェクトを担当。2017年に渡独し、大学で言語学を専攻。現在も、仕事と並行して研究を続け、博士論文を執筆しています。

ホスト:JAC Recruitment Germanyシニアコンサルタント 鈴木 彩子 

JAC Recruitment Japanで約4年間の経験を積み、マルタ共和国へ英語留学。当地で現地採用され、2011年からヨーロッパでのキャリアをスタート。ドイツへは2017年に渡り、現在、JAC Recruitment Germanyに所属しています。